
伝説は、終わらない。進化するために存在する。


鋳造スポーツホイールの性能は、成熟の域に達した。
いつからでしょうか。私たちが、心のどこかでそう結論付けてしまっていたのは。
コンピューター解析による設計の最適化、フローフォーミング製法による高剛性化と軽量化。
あらゆる技術が出揃い、市場には無数の選択肢が溢れております。
その中において、一つの金字塔として、いえ、「基準器」としてシーンに君臨し続けてきたのが、WORK EMOTION CR Kiwamiでした。
その完成された5本ツインスポークとコンケイブデザインは、一つの時代の“正解”であり、多くのフォロワーを生み出しました。
しかし、時代は止まりません。
自動車の動力性能は指数関数的に向上し、タイヤは異次元のグリップを獲得しております。
シャシーは、かつてのレーシングカーに匹敵する剛性を手に入れ、ドライバーに膨大な情報を伝え、そして要求してきます。
この急激な進化の潮流の中で、果たして既存の「基準」は、未来の要求に応え続けられるのでしょうか。
WORKが出した答えは、「No」です。
そして、WORKが自ら築き上げた偉大な金字塔を超えるために投じる、次なる一手。
それは、マイナーチェンジという安易な延命措置ではありません。過去の栄光へのリスペクトと、それを過去にする覚悟の証です。
これは、世代交代ではありません。次元の移行です。
その名は「WORK EMOTION CR Shigoku」。

新製品「至極(Shigoku)」を語る上で、その偉大なる先代である「WORK EMOTION CR Kiwami」の功績を振り返ることは不可欠です。
極(Kiwami)は、なぜこれほどまでに多くの人々を魅了し、ロングセラー・ロングランを続けることができたのでしょうか。

WORK EMOTION CR Kiwami / 19inch 10.5J +22mm / アッシュドチタン(AHG)
【時代を超越したデザイン】
極(Kiwami)の最大の魅力は、その普遍的でありながら攻撃的な5本ツインスポークデザインにあります。
細く、鋭く、そしてセンターパートへ力強く落ち込むコンケイブデザインは、静止している時でさえ、そのホイールが持つ運動性能の高さを雄弁に物語っていました。
このデザインは、JDM(Japanese Domestic Market)カルチャーの象徴として世界中に認知され、スポーツカー、セダン、コンパクトカーに至るまで、車種を選ぶことなくその足元を劇的に引き締めてきました。
シンプルでありながら、一度見たら忘れられない強烈なアイデンティティ。
これこそが、極(Kiwami)が模倣品や類似品が数多く登場する中でも、常に「本物」として輝き続けてきた理由です。

1998年、国内F3では初の鍛造マグネシウム製1Pホイールを供給。WORK EMOTIONの始祖となった。
【ストリートに根差した性能哲学】
WORK EMOTIONのルーツは、レースシーンにあります。
しかし、その主戦場は常にストリートにありました。
過酷なサーキットで培われた技術を、日常のドライビングシーンで誰もが体感できる悦びへと昇華させること。
それこそが、WORKが大切にしてきた性能哲学です。
極(Kiwami)は、その哲学をまさに体現していました。
鋳造でありながら、ワーク独自のフローフォーミング製法「WFT(WORK FLOWFOMING TECHNOLOGY)」を駆使することで、軽量化と高剛性を高次元で両立していたのです。
シャープなハンドリング、確かな路面追従性といったスポーツホイールに求められる基本性能を押さえつつ、
ストリートユースに欠かせない強度と耐久性、そして手の届きやすい価格設定。
その絶妙なバランスこそが、多くのユーザーから高い評価を得てきました。
極(Kiwami)は、単なるパーツではありませんでした。
それはオーナーの個性を映し出すキャンバスであり、愛車との対話を深めるための重要なインターフェースだったのです。
この偉大なる「基準器」が存在したからこそ、次なる進化の方向性は、極めて明確でありながら、同時に容易ではない道となりました。
なぜ、完成された極(Kiwami)を今、リニューアルする必要があったのでしょうか。
その答えは、WORK EMOTIONが掲げるブランドフィロソフィーの中に隠されているのです。
そのフィロソフィーとは、「自らが築き上げた基準に安住せず、常にそれを超えていく挑戦者であること」。
過去の栄光を守るのではなく、未来の基準を自らの手で創造し、シーンを牽引し続けるという揺るぎない意志です。
この哲学こそが、「偉大な極(Kiwami)を超えることができるのは、他の誰でもない。我々自身だ」という結論を導き出しました。
そして、その挑戦者としての魂を具現化するための開発コンセプトとして掲げられたのが、次の実にシンプルな言葉でした。
コンセプトは「極(Kiwami)の正常進化」
製品開発企画書には、コンセプトが「極(Kiwami)の正常進化」であると、実にシンプルに記されています。
この短い言葉には、開発陣の深い覚悟と自信が込められているのです。
奇をてらったデザイン変更や、流行を追いかけただけの安易なモデルチェンジではありません。
極(Kiwami)が持つ本質的な魅力、つまり「WORK EMOTIONの顔」としてのDNAを完全に継承した上で、
現代の技術、現代の車両、そして現代のニーズに合わせて、すべての要素をアップデートする。
それこそが、「至極(Shigoku)」に与えられた使命です。
開発にあたり特に意識したのは「現代的な今のEMOTIONを表現すること」です。
近年、GR86、BRZ、GRカローラ、GRヤリス、シビックTypeR、フェアレディZといった高性能なスポーツカーが次々と市場に投入されています。
これらの車両は、エンジンパワーだけでなく、シャシー性能や空力性能も格段に進化しており、ホイールにはこれまで以上の高剛性、軽量性、そしてブレーキシステムを冷却するためのデザイン性が求められます。
「至極(Shigoku)」は、まさにこの新世代スポーツカーたちをメインターゲットに据えています。
彼らの持つポテンシャルを100%引き出し、さらにその先へと導くためのパートナーとして、徹底的な性能の向上を図りました。
軽量化と各部位の最適化を重点的に行い、より純粋な「スポーツホイール」としての魅力を高めることに、開発のエネルギーを集中させています。

「正常進化」という言葉の裏で、具体的にどのような変革が行われたのかを、デザインと性能のそれぞれの側面から、「至極(Shigoku)」のこだわりの詳細を紐解いていきます。

一見すると、そのシルエットは紛れもなく極(Kiwami)の血統であることを感じさせます。しかし、細部を見れば見るほど、そこに込められた新たな意匠と技術に驚かれるはずです。

半径15mmの球状刃を持つボールエンドミルが、鋳造段階から計算され尽くしたマテリアルの上を滑るように駆け巡る。こうして生まれるのが、応力解析によって導き出された芸術的なサイドマシニング加工。
【デザインと技術の融合:機能が生み出す必然の美】
「至極(Shigoku)」のデザインにおける最大の進化点は、スポークサイドに施された「サイドマシニング加工」です。
これは、スポーク側面に大胆な削り込みを入れることで、不要な部分を削ぎ落とし軽量化に貢献するだけでなく、デザイン面においても劇的な効果をもたらします。
光の当たり方によって陰影が生まれ、スポークはより細く、よりシャープに、そして立体的に見えます。
静止時はもちろん、回転時の表情も圧巻です。
光と影が織りなす躍動感が、これまでの極(Kiwami)にはなかった新たな生命感を足元に与えます。
さらに、その造形は極(Kiwami)よりも深く、鋭く、まるで中心へと吸い込まれるような急峻なコンケイブアングルを描きます。
視覚的な凄みだけでなく、現代の巨大なブレーキキャリパーを余裕で飲み込むクリアランスを確保するという、機能的な要求から生まれた必然のフォルムなのです。
では、この機能美の結晶ともいえるデザインは、いかにして生み出されたのでしょうか。
その答えは、ワークが誇る二つのコア技術の融合にあります。

WFT(WORK FLOWFOMING TECHNOLOGY)製法で製造されたホイールにのみ許される刻印
まず、基盤となるのがリムスピニング製法「WFT」。リム部分を鍛えながら成形するこの技術で、鍛造に迫るメタルフローを実現します。そして、その強固な土台の上で、応力解析によって導き出されたスポークの余分な部分だけを、精密なマシニング加工で削ぎ落とすのです。
この強靭な骨格(WFT)と、極限の削り込み(サイドマシニング)の組み合わせこそが、デザイン性を一切妥協することなく、物理的な性能を飛躍的に高めることを可能にした「至極(Shigoku)」の設計思想の核なのです。


中央:グローガンメタ(闇夜に潜み、マシンの骨格を知的に浮かび上がらせる鈍色の輝き)
右:アイスホワイト (光を浴びて輝き、影さえも美しく彫り込む氷河のような造形色)

ロゴには、極(Kiwami)とは明確に異なる哲学が宿ります。
性能の高さを誇示するかのように漢字ロゴを前面に押し出した極(Kiwami)に対し、「至極(Shigoku)」はその名を裏側へと秘めました。
それは、人と車が一体となる領域、すなわち“人馬一体”という、より内面的で深遠な関係性を表現するためです。
ホイールがただの機能部品ではなく、ドライバーの意志を路面に伝える神経系統の一部となる。その思想は、極(Kiwami)を超える熱量を静かに物語る、「至極(Shigoku)」の青のグラデーションロゴに象徴されています。
デザインの進化が「深化」であるならば、性能の進化は「超越」と呼ぶにふさわしいです。
開発陣が最も苦労した点として挙げるのは、「極(Kiwami)のデザインバランスを崩さず、各部の最適化(剛性や全体の動的バランス)を行うことと、軽量化との調整」という難題です。
「至極(Shigoku)」は、この難題に対して驚くべき答えを提示しています。

「至極(Shigoku)」が特別な存在であることの証。それがスポークに刻まれた「WAE」の刻印です。「WORK ADVANCED EDITION」――その三文字は、最新の高度コンピュータ解析技術を駆使し、設計の限界を突破した製品にのみ与えられる栄誉の称号です。

左:WORK EMOTION CR Shigoku(至極)
赤い線が示すスポークの付け根部分の幅は、Kiwamiよりもむしろ狭く、鋭利になっています。これは、一見すると剛性面で不利に見えるかもしれません。しかし、これこそが「至極」の技術的進化の核心です。サイドマシニングによる大胆な軽量化を行いながらも、強度試験の数値を向上させる(700KG→720KG)という矛盾した命題を解決するため、応力解析によって「本当に強度が必要な部分」だけを最適化した結果が、このシャープな形状なのです。無駄な贅肉を削ぎ落とし、応力の流れを計算し尽くした、機能が生み出した必然のフォルムと言えます。
右:WORK EMOTION CR Kiwami
一方、Kiwamiは同じ部分がより肉厚で、滑らかな曲線を描いてハブへと繋がっています。これは、十分なマージンを持たせたマテリアルによって剛性を確保するという、王道的で信頼性の高い設計思想です。
その進化は、具体的な数値として明確に示されています。
以下は極(Kiwami:KWM)と至極(Shigoku:SGK)の重量比較です。
| サイズ | |||
※表示されている重量は設計目標値であり、製品の製造誤差により個体差が生じる場合があります。
全てのサイズで軽量化が図られており、特に1995+38サイズでは1本あたり0.69kgもの軽量化を達成しています。
バネ下重量の軽量化は、運動性能においてサスペンションや車体全体の軽量化の数倍の効果があると言われています。
ハンドリングの鋭さ、加速・減速のレスポンス向上、乗り心地の改善、燃費の向上など、ユーザーがこの製品を選ぶことで得られる最大のメリットは、この「軽量化と高剛性」がもたらす走りの質の劇的な向上に他なりません。
さらに注目すべきは、単に軽くなっただけではないという点です。
試験データには「※試験適用荷重値 KWM:700KG / SGK:720KG」という衝撃的な事実が記載されています。
これは、ホイールの強度試験において、「至極(Shigoku)」が極(Kiwami)よりも厳しい基準(+20kg)をクリアしていることを意味します。
つまり、「至極(Shigoku)」は極(Kiwami)より軽く、そして強くなっているのです。
これはまさに技術的ブレークスルーであり、「正常進化」という言葉を裏付ける、何より雄弁な証拠と言えるでしょう。
性能やデザインだけでなく、現代の車両に必須の機能への対応も万全です。
空気圧センサー(TPMS)やM14サイズのボルト/ナットにも対応しており、幅広い車種に安心して装着することが可能となっています。

多彩なセンターキャップをオプションから選択可能です。詳しくは【PARTS】をご覧ください。


では、この「至極(Shigoku)」というホイールは、ユーザーや業界にどのような影響を与え、どのような未来を描いていくのでしょうか。
「絶対的優位性 ―「本家・本筋」の物語
「至極(Shigoku)」の最大の優位性は、その背景にある物語です。代々受け継がれてきた5本ツインスポークデザインは、市場における唯一無二の存在であり、その血統こそが「本物」の証となります。
類似品では決して語ることのできない、極(Kiwami)からの進化の文脈、開発の苦悩、そして技術的な飛躍。
この全てのストーリーが、「至極(Shigoku)」の価値を絶対的なものにしています。
ユーザーは単にホイールを手に入れるのではなく、WORK EMOTIONの歴史と革新の物語そのものを所有する悦びを得ることができます。

「至極(Shigoku)」の登場は、スポーツホイール市場に新たな基準を打ち立てることを意味します。
「新たなWORK EMOTIONの新世代である」という言葉が示す通り、これはブランド全体の次なるステージへの第一歩です。
極(Kiwami)が長年築いてきた「基準」を自ら塗り替えることで、業界全体の技術レベルを牽引し、ユーザーにはこれまで以上の走りの感動を提供していきます。
WORK EMOTION CR Shigoku。
このホイールを一言で表すならば、それは「正常進化の極致」であると言えます。
偉大なる先代「極(Kiwami)」への最大限のリスペクトを払い、その魂とデザインを継承しながら、現代の技術の粋を集めて性能を徹底的に磨き上げました。軽く、強く、そして美しい。
スポーツホイールに求められる全ての要素を、かつてない高次元で融合させた、まさに新世代のベンチマークです。
王者の座は、守るものではなく、常に挑戦し、自ら進化し続ける者だけが座ることを許されます。
「至極(Shigoku)」の登場は、WORK EMOTIONが真の王者であることを、改めて高らかに宣言するものです。
さあ、新たな伝説の幕を開けましょう。その舞台の主役は、あなたと、この「至極(Shigoku)」以外にありません。





